遊戯王ARC-V  第80話

第80話「次元を越えた再会」



デュエルを終え、デュエルパレスに戻ってきた遊矢は、

トップスからは賞賛を、

シンジを応援していたコモンズからは、俺達の敵だと罵られてしまう。

エンタメより勝つことを優先させた今回のデュエルを反省する遊矢。



そこに、ロジェが現れ、遊矢の勝利を称える。

はじめから遊矢に期待していたというロジェの言葉に、

トップスと繋がっていたのか?とシンジが疑い、

遊矢は観衆からも疑いの目を向けられてしまう。



セキュリティの追跡をかわし、再会した遊矢と素良。

これまで、何があったのかを素良が語る。



スタンダード次元に最初に来たのは、柚子が目的ではない。

セレナ奪還の命を受けた素良は、バトルロイヤル後、

オベリスクフォースがセレナと間違えて、柚子を連れ去ったのかと疑い、

アカデミアに戻るが、どこにも柚子の姿はなく。

そこで、プロフェッサーが柚子をも狙っていた事を初めて知る。

その目的は素良も知らない。



もう一度スタンダード次元に戻り、そこでランサーズの結成と、

遊矢達がシンクロ次元に旅立った事を知る。

デニスの告白を聞き、素良はセレナの監視役であるデニスをアカデミアに送り返した。



柚子だけは助けたい!と言う素良が、遊矢に取引を持ちかける。

遊矢がセレナを連れてきてくれれば、素良はセレナをアカデミアに連れ帰り。

遊矢は柚子を連れてスタンダードへ戻れば良いと。



遊矢は当然、その提案を受け入れられず。

会話を聞いていたロジェは、セキュリティに二人を捕らえるように命じる。

ロジェは、ユーリの派遣を恐れていた。



遊矢は素良に語る。

柚子だけを救う為ではなく、アカデミアを倒す事に力を尽くせ。

目を覚ますべきだ、と。



そこにセキュリティの拘束具が放たれ、素良の身代わりになった遊矢が捕まってしまう。

柚子を守るよう託された素良は、駆け出して行った。



その頃、意識を取り戻した柚子は、スラムを彷徨っていた。

偶然、クロウの所の子供達、アマンダ、タナー、フランクと出会う。

一緒にクロウのデュエルを見ようと誘われる柚子。



そして、デュエルパレスでは、第三試合、

クロウと黒咲のデュエルが始まろうとしていた。







遊矢のデュエル反省会、ロジェの思惑、遊矢に対する誤解、

素良との再会と、素良のこれまでの経緯と真相を語る回でした。



カードを信じ、勝利を導いた遊矢のデュエルは間違ってはいないと思いますが。

確かに、彼が目指すような本来のエンタメは出来ていなかった。

それよりも、トップスへの怒りでコモンズの心を一つにまとめたシンジの方が、

より観客を惹きつけた、とも言えます。

自分のモンスター達をコモンズに見立て、

観客を扇動するシンジの巧みな話術とデュエル展開の方が、

未熟な遊矢のエンタメよりも上手だったのでしょう。



ロジェの言葉。

エキシビションでジャックの対戦相手に遊矢を指名したのは、

ペンデュラム召喚の力をジャックで試す為、というのは確かに合ってますが。

ずっと遊矢の可能性を信じていた訳ではなく、シンジ戦で追い込まれた時に、

一時見放そうとした所からして、何か裏がありそうです。

遊矢を味方に付け、利用する気なのか?



遊矢に、この大会を制してジャックともう一度戦ってもらいたい、とロジェは言ってますが。

ロジェの本当の目的は、ジャックを倒すこと。

制御が不安定なセルゲイが敗北した時に備えて、

遊矢を取り込み、ジャックを倒させようと言うのか?



ロジェは遊矢の肩に手を置きながら語り、カメラの前では握手を。

これでは誤解を招いても仕方がない状況です。

ここで遊矢がロジェの手を振りほどけば、誤解を解くことが出来た気もしますが。

ロジェがアカデミアである事を遊矢は知らず、

その親しげな態度に不信感を抱いていない遊矢には、そんな事はできません。

人が良すぎるかな、遊矢は。



遊矢がカメラに向かって叫ぶ場面で、音声をカットし、ナレーションを流すマスコミ。

巧みな情報操作が、嫌らしい。



TVを見守る零児は、「そこまで愚かではないはずだ。」と遊矢を信じています。

遊矢を信じるその根拠を、榊遊勝の息子だからだと言ってます。

零児の遊勝への尊敬は今も変わらない様子です。

零児が遊勝を尊敬するのは、エンタメデュエルのパイオニアだから、と以前言ってましたが。

それ以外にも、何か理由があるのかな?



サムはトップスと繋がっている遊矢に失望する。

折角託された調律の魔術師の秘められた可能性をデュエルで見せる事が出来たのに、

その本当の意味を今も理解せず、逆に遊矢を疑ってしまっています。

この誤解を解く事は、果たして出来るのか?



サムに限らず、観客のこの誤解を解かないと、遊矢が勝ち上がった所で、意味が無い。

皆を笑顔にして、大会の間違いを、トップスとコモンズの本当の融和を、

訴える事が、このままではできません。

これではロジェの思惑通りに・・・。



遊矢が柚子を探しに行く事を許可したロジェ。

これもまた特別扱いで、遊矢がトップスとの繫がりを疑われる要素になってしまいます。

ここで遊矢を泳がせて、柚子の居場所に関する情報を得るのが目的だったのか。

あんな小さなコインサイズのマイクで、離れた遊矢と素良の会話を収集してしまう、

セキュリティの技術力が凄いです。



柚子とセレナをユーリに引き渡す任務を引き継ぐと、

あの時デニスに素良は言ってましたが。

これも本心ではなかった。

柚子を助けるため、上手くデニスを現場から引き離したんですね。



バトルロイヤルの時、

柚子に融合を教えたのは、友情からじゃなかったのか?という遊矢の問いに、

「あれは余計だった」と否定した素良ですが。

それは本心ではなかったと、告白しています。

アカデミアで育った素良には、友達は居なかった。

遊矢と柚子が、素良にとっては初めての友達なのだと。



素良のアカデミアので回想シーン。

厳しい訓練を受ける素良には、笑顔はありません。

そして、足下には、訓練で力尽き倒れたアカデミアの兵士達が・・・。

かなり過酷な環境で育ったようです。



そうなると、素良もセレナ同様、「家族」を知らずに育ったのかな?

アカデミアには孤児が集められているのか?

或いは、はじめから親の居ない、人工的に生み出された存在だったりするのか?



情報収集の為の潜入活動とはいえ、出会った時から笑顔で遊矢に近づき、

調子の良いことばかり言って取り入ろうとした辺り、あのあざとさは、

アカデミアで習った訳では無く、賢い素良独自の戦略だったんでしょうね。



素良は直接、柚子に関する情報をアカデミアに話していないようです。

ですが、記憶を見られ、柚子の情報が上層部に伝わったかも、と言ってます。

人の記憶を見る技術がアカデミアにある事を、素良は知っている。

素良のこの様子だと、LDSの様な記憶の改ざんや、セルゲイのような人格操作は、

今の所受けてない様子です。



遊矢の言う通り、セレナだけを連れ戻した所で、

プロフェッサーに柚子を諦めさせる事は恐らく不可能で。

アカデミアに戻った時、再び記憶を見られてしまえば、

今ここでの遊矢とのやり取りも、

柚子の行方も、アカデミアを裏切った事も、全てばれてしまう・・・。



素良は今もアカデミアの理念、世界を一つにするという使命を信じています。

プロフェッサーの命令に対する忠誠も、変わらないと。

そう口では言っていますが。

一方で、アカデミアを「牢獄みたいな」場所だと言い、

友達を助けたいと、柚子とセレナの交換を遊矢に持ちかけたり。

その矛盾した言葉に、今も素良の心が揺らいでいるのが分かります。



ロジェには、遊矢と素良の会話が全て筒抜けです。

二人の友情の事も、素良の裏切りの事も知られてしまっています。

この情報を巧みに利用し、二人を騙す事に使われたら、まずいですね・・・。



ロジェがやたらとユーリを恐れているのは、何故なんだろう?

ユーリの事をよく知っているのか?

ロジェが恐れる程に、ユーリは強くて残忍なのか?





複雑なストーリーと情報を上手くまとめては居ますが、

テンポの悪さと、キャラの心情を直接台詞で言わせてしまうのは、

いつもの癖かな?





作監:山崎輝彦・Hwang Youngsik)

(脚本:上代務