遊戯王ARC-V  第73話

第73話「地を這う敗北者たち」



アニメ遊戯王シリーズ 通算777回記念の回。

OPもいつもと違う特別仕様で、歴代の主人公とそれぞれのエースモンスターが登場します。

といっても、流石に新規アニメという訳にはいかず、

過去映像をつなぎ合わせた公式MAD的なものでしたが。

それでも、今、こうして歴代主人公を見ると感慨深いですね。



冒頭の、前回までのあらすじを語る遊矢の台詞。

227戦での、あの異変を、

「俺自身の中に、誰よりも強く勝利を追い求める気持ちがある事を思い知らされた。」

と語っています。

ロジェはそれを「遊矢の本性」だと言っていました。



勝鬨戦で初めて逆鱗化したのも、デュエルで追い詰められた時。

オベリスクフォースの所業を目の当たりにした時、逆鱗化したのも、

怒りの感情に突き動かされ、勝利を欲したから?



そうなると、逆鱗化の正体とは、

遊矢の中にある、勝利を求める強い欲求、なのかもしれません。

優しい遊矢は、デュエルで人を傷つけるなんてダメだ!と思っている。

でも同時に、絶対に勝ちたい!という欲求も当然あり。

その葛藤を避け、強い勝利への欲望だけを心の奥底に無理に押し込めていた。



ユートを吸収した事が、或いはダークリベリオンの影響か、

何かを切っ掛けに、今まで押し込めてきたその強い欲望が、

表に出てきてしまった結果が、逆鱗化。

と考える事もできそうです。

ミエルが言っていた

「二つの心を覆い尽くすかのような何か恐ろしい存在」の正体とは、これの事かな??



それなら、逆鱗遊矢も、間違いなく、もう一人の遊矢。

逆鱗化を制御出来るようになるという事は、

自分の中の勝利への欲求をコントロールできるようになる、

という事を意味しているのかもしれません。



地下の巨大なゴミ処理施設。

そこにも競争社会の原理が働いていた。

地上に戻る権利を賭けたデュエルに敗北し、ギャラガー達に足蹴にされる無残な227の姿。

弱い者いじめを見過ごせない権現坂と徳松が割って入る。

再会したギャラガーから、この地下世界の掟、そしてロジェの噂を聞く。



丁寧にギャラガーが台詞で説明してくれたので、その情報を書き出すと。



・一生出られないと言われている地下の強制労働施設だが、地上に出る方法がある。

・デュエルで下からコツコツ勝ち上がり、ギャラガーの手下を倒し、

 そのお眼鏡にかなえば、地上に出られるらしい。

・新入りにはギャラガーの歓迎会と称したデュエルの厳しい洗礼が。

ギャラガー、実は元トップスだった。



柄の悪さから、てっきりコモンズ出身かと思ってました。



・地下に送られた者達の中から、腕の立つ者を見つけ出し、ロジェに差し出すのが、

 本当のギャラガーの仕事らしい。

・腕の立つデュエリストは非合法の地下デュエル場へ、そして本当に実力のある者だけが

 ロジェ長官へと献上される。



以前会った時の、自称プロモーターというのは、ある意味合っている、という事か。



・地下デュエル場へのセキュリティの手入れの時、真っ先に逃げる事ができたのも、

 事前にロジェから情報を得ていたから。

・理由は分からないが、ロジェは強いデュエリストを欲しがっている。

・セルゲイも、ギャラガーの献上品だった。

・別名、デュエリストクラッシャーのセルゲイ。元は有名な犯罪者。

・収容所でも多くの囚人を潰した事で地下送りに。

ギャラガーの報告を、まるでロジェは最初から分かっていたようだった。

・セルゲイの出場をみて「これが私の計画を現実のものとする為の第一手」だと呟くロジェ。



ロジェの計画とは一体?

強いデュエリストを集め、セルゲイを出場させ、何か企んでいる?



・セルゲイは、実は一度死んでいるらしい。

・凶暴だったセルゲイが、今は大人しくロジェに従っているのは、人格操作のせいなのか?

・ロジェは別次元から来たらしい。

・ある時、突然シティに現れ、リアルソリッドビジョンなど、

 この世界になかった新しい技術を行政評議会に提供し、

 瞬く間にセキュリティの長官まで成り上がった。

・徳松がイカサマで捕まる前(10年前?)は、リアルソリッドビジョンなんて無かったと言う。



ギャラガーの歓迎会を受けるかどうか、迷う権現坂と徳松の前に、

強制収容所で徳松の子分だった二人が現れる。

今はギャラガーの手下になったらしく、徳松をも煽ってくる二人。



自分を犠牲にし、泣きながら徳松を送り出したあの二人が、本気で徳松にケンカを売るとは思えませんが・・・。

何か裏があるのかな?



さらにそこに、地上から送られてきたばかりの沢渡が加わる。

沢渡は地上への生還を賭けたデュエルにやる気満々です。

さて、この勝負、一体どうなるのか・・・。



その頃、地上では、デイモン・ロペスと、セルゲイ・ヴォルコフの対戦が。

デイモンはクロウ達の仲間で、脱獄を手伝ってくれた人ですね。

劣勢だったセルゲイだが、一瞬にして大逆転し、デイモンに勝利してしまう。

敗北したデイモンは、クラッシュして、酷い怪我をしている様子。

一体、デュエルで何があったのか?



エレベーターの底に隠れ、地上に戻った月影は、見聞きした地下の情報を零児に伝える。

零児によれば、ロジェは融合次元のアカデミアから来たのだろうと。

評議会はそれを知っていて、ロジェと手を組んでいるのか?

それとも、知らずに敵を引き入れてしまったのか・・・?



地下に戻ろうとする月影を、零羅が呼び止める。

月影と零児が見守る中、今まで語らなかった自分の気持ちと決意を語り出す零羅。



最初、零羅は月影と兄に謝りたいと言い出しました。

零羅の気持ちを知らない者からみれば、何に対して謝りたいのか疑問に見えますが。

仲間であり、自分を助けてくれた月影に、負けて欲しいと願った事を、

間違いだったと、後悔しているようです。

それを正直に告白する零羅の勇気と、真っ直ぐな気持ちに、心打たれます。



零羅に戦う決意をさせたのは、ジャックのあの言葉。

戦いへの恐怖と、兄に見捨てられる事に恐れを抱いていた零羅の中にも、

雄々しく戦いたいという強い思いが、本当はずっと隠れていたんですね。



零羅の話を聞くとき、月影だけが屈んで、零羅の目線に合わせてくれている所に、

優しさを感じます。

零羅くん自身が、初めて自分で多くを語ってくれたのが、嬉しい。

これからは、零羅くんも変わっていくのかな?

デュエルで活躍できるシーンもあればいいなと思います。



遊矢の部屋でドアを隔てて会話する月影。

自分と地下の仲間達の無事を遊矢に伝える。

そして、自分が情報収集に動いているのも、

仲間を見捨てない零児の命だからこそだと言う。



遊矢は舞網チャンピオンシップの件で、危険を承知で多くのデュエリストを戦いに巻き込んだ零児を、

非情な男だと思っています。

零羅の出場にも遊矢は強く反発していました。

そんな遊矢にとっては、月影の話は意外なはずです。



感情を表に出さない零児。

誤解される事も承知で、時には遊矢に厳しく当たる。

零児が発する「市民の為に」「仲間達の為に」という言葉が、果たして本心なのかどうか、

見ている方も不安になります。

しかし、月影によれば、零児は地下の仲間を助けるつもりらしく。



それが本当なら、遊矢の前で見せた、これまでの冷酷な態度も、憎まれ役を演じるのも、

それなりの理由があっての事。

遊矢は果たして、零児のその本心に気づけるのか?

和解出来る日がくるかな?



月影も、任務であれば何でも従う、という訳では無く。

仲間を見捨てるような男なら、とうに見限っていた、と告白しています。

ちゃんと信頼あって零児に仕えてたんですね。



しかし、零児に仲間を思う気持ちがあるのなら、それをちゃんと表に出さないと、

信頼も生まれないし、仲間達をまとめる事もできないんじゃないか?と心配になります。

実際に、ランサーズ結成直後は、まとまりのない集団に見えました。

司令官故に、そう振る舞っているのか?

もう少し感情を表に出して、仲間達と打ち解けて欲しいものです。

今はそんな余裕もありませんが。



これからは逃げない、ちゃんと戦うと言う零羅の決意が、月影から遊矢に伝えられる。

そして、遊矢に優勝して欲しいと。

自分を守ってくれた遊矢の事を、零羅も大事に思ってくれてたんですね。

自分の為じゃなく、遊矢は遊矢の為に戦って欲しい、という零羅。優しい子です。



ジャックのしてきた功績の凄さを認め、

今、ランサーズとしてやるべき事が何なのか?を、零羅は自分の言葉でしっかり語ってます。

それは零児がこれまで言っていた通りの事で。

零児の言葉を、ちゃんと聞いていた証です。

そして、今成すべき事も理解している。

本当は、こんなにしっかりとした子供だったんですね。



ジャックに勝つ方法が見つからず、悩む遊矢に、月影はジャックの言葉を教えた。

何かを成し遂げようとしているなら、怯むな。

その言葉に、遊矢は気づかされる。



零羅への伝言を頼まれ、無理だと即答する月影。(笑)

その代わりに、月影に遊矢が頼んだ事とは・・・。



柚子の部屋に、手紙を届けた月影。

その手紙には、遊矢の決意が綴られていた。

それを読み、涙する柚子。



近くにいるのに、会うことが出来ない柚子。

デュエルで伝えたメッセージが、遊矢にちゃんと届いていたのかどうかすら、

柚子にはわかりません。

そんな不安の中、ようやく伝えられた、遊矢の思い。

それが、柚子にとってどれだけ嬉しかった事か。



手紙には、この次元に来た経緯や、ランサーズの事までは書かれていません。

詳しい事情を省き、ただ、戦う決意と、柚子に対する思いだけが語られています。

大会でのデュエルと、こうした手紙でしか、やり取りが出来ない、

歯がゆい状況ですが、それでも二人の思いが繋がっていると感じさせてくれます。



自分の声が観客に届かないのも、ジャックに独りよがりだと言われたのも、

自分がまだ何も成し遂げていないからだと気づいた遊矢。

デュエルでみんなを笑顔にするには、認めてもらうには、ジャックに勝つしかない。

「そして、アカデミアに勝って、次元戦争を終わらせて、一緒に帰ろう、みんなの元へ。」

「みんなが笑顔になる世の中にして、そして・・・帰るんだ。それぞれのふるさとに。」



果たして、遊矢は勝ち上がる事が出来るのか?

ちゃんと、どんな相手でも、どんな状況でも、遊矢らしい自分のデュエルをする事ができるのか?

注目したいです。



今回はデュエル無し。

代わりに、地下の様子、ロジェの正体、そして零羅くんが決意を語る、

というストーリー補完の回でした。

最後の遊矢の手紙で、やっと気持ちを伝え合えた二人が見れたのが、嬉しかったです。



長官から227の手紙の中にあった対戦表だと、

二日目第三戦は黒咲vsデニスだったきがするのですが。

対戦順番が変更になったのかな?







作監:君野敏)

(脚本:上代務