遊戯王ARC-V 第67話
第67話「シティの光と影」
あれ程言い争っていた観客達も、クロウと権現坂のデュエルに魅了され、
二人を賞賛するようになっていた。
これこそフレンドシップカップのあるべき姿!だと、司会のメリッサも興奮しています。
大会を企画した評議会も、こうなる事を臨んでいたのだと思いますが。
社会や政治に対する不満をそらす為に、市民がデュエル大会に熱中させるよう仕組んでいるようにも思えます。
果たして、これでコモンズとトップスの融和は果たされるのでしょうか・・・?
敗北した者は、このペントハウスにはいられない。なら、クロウに敗北した権現坂は、一体何処へ?
権現坂を心配していた遊矢の部屋に、突如現れたのは、何と徳松だった!
カードでドアボーイを買収したらしい。
収容所で培った手法とはいえ、面白いです。
遊矢の言う通り、部屋は評議会にカメラで監視されているハズですが。
24時間体勢ではないのかな?
或いは、多少の事は多めにみて見逃してくれているのか?
徳松が耳にした噂話。
コモンズ出身で大会に出場する選手の優遇ぶりに、嫉妬する人も、結構いるんですね・・・。
格差社会が生み出す心理的な闇の深さを感じさせます。
大会で敗北した者は、このシティの地下深くにある、巨大なゴミ処理施設、
そこで強制労働させられる、という。
徳松の予想だと、収容所で脱獄を企てた者が二度と帰ってこないのも、
そこに送られたからではないか?と。
ならば、敗北した権現坂も、そこへ??
徳松が言うには、彼が収容所に入る前、10年前に比べて、シティはさらに発達。
1000万人が暮らし、そのわずが1%にあたる10万人が、トップスとして豪華な暮らしを送る。
そして、トップスが生み出したゴミの処理を、コモンズに押しつけているという。
サブタイトルの、シティの光と影、とは、この事ですね。
会場ではメリッサが第二試合の対戦者を紹介。
二戦目の組み合わせは、クロウの仲間もシンジ・ウェーバーと、赤馬零羅。
零羅の部屋に迎えにきた零児は、この次元の者達におまえの力を見せてやれ、と零羅を促すが。
怯えた零羅は嫌だと言い、部屋を飛び出してしまう。
遊矢の台詞によると、零羅達ジュニアクラスはリアルソリッドビジョンでのデュエルはしてはいけないらしい。
危険を伴うから、かな?
だとしたら、クラッシュの危険を伴うライディングデュエルは、尚更避けるべきですが。
部屋に飛び込んできた零羅は、遊矢にしがみつき、怯えていた。
零羅の後を追ってきた零児に、遊矢は怒りをぶつける。
どうして零羅を戦わせる?まだ幼い子供なのに!と。
遊矢が零児と直接会うのは、シンクロ次元へ旅立ってから、これが初めてです。
遊矢はまだ、前回の零児とのデュエルでの事を引きずっているはず。
柚子をはじめ、大勢を戦いに巻き込み、
全ては自分達の街を、次元を守るためだと切り捨てる零児の非情さに、
まだ納得出来ていません。
遊矢が零児に対して抱く不信感は深刻で、
共に戦うランサーズの仲間同士で、この信頼関係の無さは致命的なのではないか?と思います。
収容所脱出などで遊矢達が仲間同士、少しずつ信頼を築いているのに対して、
零児だけが司令官として孤立してしまう。
そうなると、今後の作戦にも支障が出てくるように思うのですが・・・。
それでもなお、各々の利害や目的だけで、
ランサーズのメンバーを思い通りに動かせると、零児は思っているのかな?
零羅を出場させるのは、実戦経験を積ませる為。
零羅はアカデミアとの戦いにおいて、必要な存在になり得る、と零児は言う。
そこまでの力が、零羅には秘められているのか??
零児の説明に納得出来ず、声を荒げる遊矢。
シンクロ次元に来てから、ずっと怯え、兄の零児に会いたがっていた零羅。
こんなにもお前を求め、慕っている零羅を、なぜ戦いに巻き込むのか!?
お前が守らないなら、俺が零羅を守る!と言い出す。
出場を拒む理由を問いただす零児に、零羅は答える。
お菓子をくれた、クロウの友達だから・・・。
それを聞き、月影に代わりに出場するよう指示をだす零児。
部屋を出て行く零児の後を追う零羅。
「怒らないで兄様!僕、兄様の言う通りにするから!」
そんな零羅に、零児は優しく答える。
「怒ってなどいない。むしろ、喜ばしく思っている。
お前の中に、自分というものが芽生え始めている事を確認できたのだから。」
遊矢の制止も聞かず、二人は仲良く手を繋ぎ、去って行く。
遊矢にはどうする事も出来ない。
徳松の言う通り、零羅は遊矢よりも、零児の事が好きなのだ。
やや歪に見えるこの兄弟は、本当にこのままで良いのだろうか?と思えてきます。
そして、零羅の衝撃の過去。
回想シーンで、検査を受ける零羅を見ながら、日美香は言う。
あの子には自分というものがない。欲求も、望みも。
ある国の紛争地帯で、身寄りの無い零羅は、過酷な環境で生き抜く為、
自己防衛本能で自分を捨て、他者になりきる力を得た。
正に、操り人形だと。
日美香はその「他者になりきる能力」を、利用する気でいたようです。
その為に、血の繋がらないこの子供を、赤馬家に迎え入れたのか・・・。
一方で、零羅の自我の芽生えを日美香が知れば「舌打ちするだろう」と、内心思う零児。
零児の顔を見上げ、僅かに微笑む零羅の笑顔を見て、繋いだその手を握って答える。
零羅が出場を拒んだ理由は、ライディングデュエルに対する恐怖心ではなく、
優しくしてくれた人と戦いたく無い、という優しい心から、でした。
それは、デュエルで相手を打ち負かす事の残酷さを、零羅なりにちゃんと理解しているから、なんだろうな。
そうした理由をあっさり受け入れた零児も意外でしたが、なるほど、そういう事だったんですね。
恐らく、自我を持たない零羅に、零児の戦術を真似させ、対アカデミアの戦力にしようとしたのでしょう。
しかし、そんな日美香の思惑とは裏腹に、零羅に自我が芽生え始め。
それを零児が「喜ばしく思う」のは、自我がデュエリストに重要だから、とは言ってますが。
建前上は、零羅の事を戦力だと言い、駒として扱うような事を言ってはいますが、
零児の零羅に対する優しい態度をみると、零羅に対して人として、家族としての情があるのだと感じさせます。
舞網チャンピオンシップで感じた零羅の謎も、これで理由が分かりました。
零羅に語りかける時だけ、零児の声が優しくなる理由も。
果たして、この兄弟は、これからどうなるのか?
零羅は、血の繋がらない家族だという事を知っているのかな?
自分が与えられた役割とか、日美香の目的も、いつか知る時が来たら、一体どうなるのか?
常に冷酷に振る舞う零児が、唯一優しさを見せるのは、零羅だけです。
その零羅に危機が及んだとき、零児はどうするのか?それでも非情になりきれるのか?
その辺りに注目したいです。
父親に見捨てられ、母親には依存され、歪な家庭にあった零児が、
血の繋がらない少年から家族としての愛情を求められた時、どう答えるのか?
零児の内に秘められていた、優しさや愛情、葛藤などが、もっと見えてきたら面白いですね。
ランサーズをまだ信用出来ないと言う評議会は、選手達を個別の部屋で監視し、
互いの交流を阻止していたようですが、今回の件で遊矢達はあっさり再会を果たしてます。
警備がザルなのか、それとも、それ程遊矢達を危険視してはいない、のかな?
今後も何かしらのハプニングで、仲間達が再会できたら良いのですが。
(作監:小林一幸・井口忠一)
(脚本:上代務)