遊戯王ZEXAL II  第143話

第143話「孤高の決闘者(デュエリスト)『ナッシュ』 宿命のラストデュエル!!」



続くナッシュとゼアルのデュエル。

遂にゼアルが冀望皇バリアンを打ち破った、かにみえたが。



ナッシュはトラップを使い、自身へのダメージをゼロにしてしまう。

さらにこの状況から反撃を開始。

ブラック・レイ・ランサーを特殊召喚して、ゼアルに効果ダメージを。

ゼアルはビヨンドを除外してホープを召喚し、LPを回復して、

辛うじてダメージを凌く。



ダメージの衝撃で、ゼアルは解除され、遊馬とアストラルの姿に戻る。

疲労から、シャークの姿に戻るナッシュ。

フィールドにはブラック・レイ・ランサーとホープ

遊馬はこの状況に、初めてデュエルした時を思い出すと言う。

何度も何度もぶつかり合って、デュエルしながら語り合ってきた。



もう昔みたいに戻れないのか?と問う遊馬に、

シャークは、無理だ、あの頃とは違うと言う。



 遊馬、お前は大事な事を勘違いしてるぜ。



 俺達は、とっくに分かり合ってんだよ。



 お前の気持ちなんて、とっくに分かってるさ。

 お前がどんな気持ちで戦ってきたのかも。



 だが、人には、わかりあっても、引くに引けない時がある。

 俺には、俺を信じてくれた仲間がいて、そいつらは今も一緒に戦っている。



 俺は自分を信じてくれたあいつらを裏切るわけには、

 失うわけにはいかねえんだ。



シャークの周囲に、七皇の仲間達、前世国王時代の部下達、そしてイリスの姿が。

シャークに寄り添うように肩に手をやる璃緒と、イリスの頭に手を置くドルベ。

端の方に、ばつの悪そうな表情のベクターもいます。



あれだけの事をしておいて、

それでもナッシュに「仲間」の一人として認められたベクターは、

今どんな気持ちなんだろう・・・?



シャークの「失う」の一言に、遊馬はあの扉の言葉を思い出す。



 扉を開けろ。

 さすれば、お前は新たな力を手に入れる。

 だが、その代償として、一番大事なものを失う。



遊馬は考える。

俺が失う大事なもの。

それは、アストラルなのか?それともシャークの事なのか?

どっちも失ったりしねえ!と、遊馬は奮起する。



遊馬はホープで攻撃を仕掛けるが、シャークは墓地のモンスター効果でこれを無効にし、

ホープの攻撃力を下げる。



シャークは再びバリアンのナッシュへと姿を変え、

エアロ・シャークをエクシーズ召喚。

エアロ・シャークの効果ダメージで遊馬に止めをさそうとするが、

遊馬はトラップを使い、ホープの攻撃力を下げてダメージを回避。

ブラック・レイ・ランサーの攻撃は、ホープの効果で無効化するが、

エアロ・シャークの攻撃を受けたホープは、破壊されないものの、遊馬達はダメージを受け、

LPは残り50に。



今回のデュエルではブラック・レイ・ランサーやエアロ・シャークなど、

初期のシャークのモンスターが登場。

姿がナッシュとなっても、やはり中身はシャークなんだと感じさせます。



遊馬は、シャークの決意が少しも揺るがないと知る。



 俺、ずっとみんなと一緒にいられると思ってた。

 ずっとあいつらと仲間でいられるって。



 でも、でもよ、今度ばっかりは・・・。

 今度ばっかりは答えが見つかりそうにねえ。



 何やってんだろうな、俺。

 折角ドン・サウザンドを倒したってのに。

 俺の最高の仲間と、こんなボロボロになってデュエルして。

 俺は、俺は・・・。



落ち込む遊馬を、涙目で見守る小鳥が、意を決して遊馬に叫ぶ。



 諦めちゃダメー!



 自分で自分の限界を決めるなんて、遊馬らしくない!

 あなたは、みんなの・・・みんなの希望が託されているのよ。



 だから・・・だから最後までしゃんとしなさい、遊馬!



そんな小鳥をみて、微笑みながらアストラルは言う。



 怒られたぞ、遊馬。

 どこか明里に似てきたな。



遊馬は立ち上がり、アストラルと再びゼアルの姿へ。



仲間を何より大事にしてきた遊馬にとって、

その仲間と命を賭けたデュエルをする事ほど辛い事はない。

落ち込むのも無理はありません。



ここで小鳥の励ましが。

この時の為だけに、小鳥はここに来たと言えるかもしれません。

月並みな励まし方ではありますが。

この役割は、これまでの遊馬のほぼ全てのデュエルを見てきた小鳥にしかできない。

アストラルには出来ない役割です。



デュエルをせずに、ただ遊馬に付いてくるだけの小鳥に対して、

ヒロインとしての存在意義はあるのか?という批判もありましたが。

遊馬がこれまでどんな辛い思いをして、どんな事情で、何を背負い、今デュエルしているのか?

それを知らずに遊馬をただ励ますのでは、あまりにも言葉が軽く、無責任になってしまう。

だから小鳥は、遊馬のデュエルを全て見る必要があった、のだと思います。



ゼアルはシャイニング・ドローで引いたシルフィードホープに装備、攻撃を仕掛ける。

ナッシュはトラップで場の二体のエクシーズモンスターを除外し、冀望皇バリアンを蘇らせる。

対して、シルフィードの効果でさらに攻撃力を上げるホープ

この時、ナッシュがトラップ、ドロー・リセット・バトルを発動。

お互いにカードを1枚ドローし、ホープの攻撃を無効に。

さらに、この効果でドローしたカードをこのターン使わなければ、そのプレイヤーは敗北する。



これが、勝敗を決する運命のラストドロー。

ナッシュはバリアンズ・カオス・ドローで、ゼアルはシャイニング・ドローで、運命のカードを引く。



ゼアルが引いたのは、あの、ダブル・アップ・チャンス。

攻撃力を倍にしてもう一度ホープのバトルを可能にするカード。

この攻撃が通れば、遊馬達の勝利となる!



その時、扉の言葉が遊馬にフラッシュバックする。



 そうか・・・

 あの扉が言った事ってのは・・・。



遊馬がゼアルを解除し、アストラルに言う。



 アストラル

 一番大事なものを失う。

 あの扉は、俺にそう言った。



 俺が失う、一番大事なもの

 それは、俺自身の事なんだ。



 そうだ、今のままじゃ俺が俺でなくなっちまうんだ。



 俺は、いつか分かり合える、敵も味方もねえ。

 共に笑ってデュエルできる日がくる。

 そう信じて戦ってきた。



 だけど、このシャークとのデュエルに勝ち、

 ヌメロン・コードの奇跡の力を使うためには、

 俺が、あいつの命を奪わなきゃならねえ。



 俺にとっちゃ今でも、あいつは大事な仲間なんだ。

 その仲間を犠牲にして、手に入れる未来でいいのかな?

 そんな未来が、俺達の未来でいいのかよ?



 みんなが俺に、希望を託してくれたのも分かってる。

 でも俺は、俺は・・・。



これが、遊馬が辿り着いた、答え。



死んで、希望を託していった仲間達の思い。

アストラル世界を救う使命。

それよりも。

仲間を見捨てる事で生き残る未来に、意味があるのか?という疑問。

とても遊馬らしい結論だと思いました。



普通なら、妥協する。

何かを欲するなら、何かを我慢し、何かを犠牲にする。

でも、本当に大事なものだけは、絶対に譲れない。



この選択で、遊馬が敗北し、アストラル世界が滅び、人間世界にも影響が出たとしても。

死んでいった仲間達も、消滅するアストラルも、アストラル世界の住人達も、

あの遊馬が決断した事なら仕方ない、と言ってくれそうな気がします。

かなり都合の良い解釈ですが、遊馬の性格をよく知る者なら、分かってくれるんじゃないかな。



遊馬の言葉にアストラルは、分かっていたと、理解を示す。

遊馬は、人を信じる力で未来を切り開いてきた。

それがどんな答えになろうと、私はいつも君と共にある、と。



アストラルも、覚悟を決めているようです。

遊馬が出した答え、それに従う事で自分が消滅する事も、アストラル世界が救えないかもしれない事も、

最初から全部覚悟していたのかな・・・・。



遊馬はシルフィードの効果を使い、シルフィードホープのORUにする。

装備していたシルフィードを失ったホープの攻撃力は下がり。

そして、ホープのORUを使い、このホープの攻撃を無効に。



遊馬は言う。



 シャーク・・・俺はお前を犠牲にする未来なんていらねえ。



 俺達のライフはたったの50だけど、

 それでも、お前の攻撃をずっと耐え続けてみせる!

 新しい未来が見つかるまで!

 ずっとずっと、どこまでも!



遊馬は、自ら敗北を選んだ訳ではなく。

仲間であるシャークの犠牲を選ぶ訳でもなく。

どちらも選ばない。

それはとても遊馬らしい選択だと思いました。



これまでも遊馬は、デュエルで仲間の犠牲の選択を迫られる場面が幾度かありました。

その度に、遊馬はどちらか一方を選ぶ事はしなかった。

そういう所は、昔からブレる事はない。

「選ばない」のが遊馬、なんですね。



遊馬の決意を聞いたナッシュが、速攻魔法、栄光の七星(グローリアス・セブン)を発動。

冀望皇バリアンのCORUが復活し、その攻撃力は7000。

このターン、冀望皇バリアンはバトルでは破壊されず、ダメージも無効にする。

そして、自分が受けるはずだったダメージを、相手に与える効果が。



つまり・・・。

遊馬達がダブル・アップ・チャンスを使い、攻撃力8000のホープでそのまま攻撃していれば、

ナッシュはこの栄光の七星の効果で、ダメージを受けず、

その差1000のダメージを遊馬達が受け、敗北していた・・・。



このターンは、これで引き分け・・・かと思われたが。



栄光の七星は、バトル終了後、自分のLPを相手のLPが変化した数値と同じにする。

遊馬達のLPの変化はゼロ。

よって、ナッシュのLPはゼロとなり・・・・。



速攻魔法、栄光の七星は、相手にダメージを与える事が出来なければ、自滅する、

大きなリスクを負うカードたったのか・・・。

そして、遊馬の選択が、この勝敗を決めてしまった。



吹き飛ぶナッシュが、シャークへと姿を変え、内心呟く。



 (まったく、お前ってやつは・・・。

  だが・・・。)

  

駆けつける遊馬に、体を起こし、遊馬に語る。



 分かってたよ。

 お前がダブル・アップ・チャンスを使うだろうという事は。



 ったく!

 あそこで攻撃してこねえなんて、

 ホント、お人好しだぜ。



 だが、遊馬、アストラル

 お前達の言葉、染みたぜ。



最初から!?(敗北を覚悟していたのか?)というアストラルの問いには否定し、

俺は本気だった、悔いはないとシャークは言う。



 遊馬・・・人は大抵、成長する中で、大事なものを捨てちまう。

 だが、お前は絶対、捨てるなよ。



 人を信じる力、諦めない心、

 絶対に捨てんじゃねえぞ。



消えてゆくシャーク。



 お前達の導く未来も見てみたかったけどよ、

 そうもいかねえようだ。



シャークの中のナンバーズが飛び出し、アストラルの中へと吸収されていく。



 小鳥!このバカから目を離すなよ。



 ありがとうよ、遊馬、アストラル。



 俺の生涯の友。



 お前らと最後に、最高のデュエルができて良かったぜ。



 じゃあな。





遊馬の出した答えを見届け、シャークは消えていきました。

「人は大抵、成長する中で、大事なものを捨てちまう。

 だが、お前は絶対、捨てるなよ。」と言い残して。



シャークは・・・成長する中で、大事な何かを捨ててしまったのかな・・・。

シャークには後悔している事があるのか?

もしあるとしたら、仲間を救えなかった、守れなかった事、か?

だから遊馬には、今のその信念を貫き、仲間とその絆を守れ、と言いたかったのかな。



前世において、単身ベクターの元に乗り込まず、仲間を信じて共に戦っていれば。

バリアン世界を救うために、遊馬達との絆を断ちきらなければ。

自らの手でIVを葬ることがなければ。

人を信じる力、諦めない心を、捨てていなければ・・・。

もっと違う結末もあったのかもしれません。



この場にいる小鳥にもシャークは言葉をかけてくれました。

いつも遊馬と共にいて、遊馬を支える小鳥の事も、シャークはよく見ていた。

消えゆく自分の為に泣いてくれた小鳥の事を、気遣ってくれたのでしょう。





最期まで、とてもシャークさんらしかったと思います。



最後のあの速攻魔法、栄光の七星は、シャークにとって一か八かの賭だった、のか。

遊馬がダブルアップ・チャンス使い、それを自ら無効にしなければ、シャークは勝利していた。

だが、遊馬はホープの効果を使って無効に。



甘ちゃんでお人好しの遊馬が、もしもシャークに止めを刺す事を躊躇すれば、自分は負ける。

勝つつもりではいたけど、もしかしたらあり得るかもしれない敗北も、覚悟していたんだと思います。

だから、あの清々し笑顔だったんだ・・・。



遊馬を道連れにしようとしたあのベクターにさえ、

一緒に死んでやるよと言った遊馬。

シャークも、そうした遊馬の性格を分かっていた。



もしかしたら・・・・。

仮に敗北するにしても、

遊馬に自分を殺させ、罪悪感で遊馬を苦しませるような敗北は避けたかった、

だから、自分が使用したカードの効果で自爆する道を選んだのかな・・・とも思えます。



最後にシャークが使用したカード、栄光の七星(グローリアス・セブン)のイラストは、

バリアン世界を背景に立つ七皇のシルエット。

CORUと復活させるその効果といい、最後までナッシュと七皇の仲間達との絆を感じさせるカードでした。



ある人がシャークの事を「諦めない頑張りが身を結ばないことがあるのを身を持って知ってる人」だと言っていました。

そのシャークが、諦めない心を絶対に捨てんじゃねえぞ、と言う。

その言葉に重みを感じます。



今回はシャークの追悼ED。

懐かしいシーンが続く中、いつもの「全て壊すんだ」の所に、悪い顔で皇の鍵を破壊するシャークさんが。(笑)

この部分はウケ狙いなカットを持ってくるのが定番のようです。

誰が編集しているんだろう?



アップ時の線の太さと力強さ。

キャラ顔も細部まできれいです。

最初の方と最後の方、シャークのアクションのキレの良さ。

アメコミ調の陰影の濃さ。

ナッシュのマントや取り巻く煙の動き。

最後のさっぱりとした表情のシャークが、きれいでした・・・。



原画に原憲一さん、小川純平さん、田中宏紀さんの名前もあり。



作監:丸山修二)

(脚本:吉田伸)