遊戯王ZEXAL II  第137話

第137話「ベクターの翻弄!捕われた仲間の絆!!」



アンブラルが破壊され、ベクターの記憶が蘇る。



ベクター皇子の誕生を祝福する国民。

ベクターは運命の日に生まれた、平和の象徴、神の生まれ変わりと言われていた。

だがベクターの父、国王は、平和をくだらないと一蹴する。



揺りかごで眠る赤子のベクターの元に、一枚のカードが舞い降り、その体に消えていく。



あれは、No.65 裁断魔人ジャッジ・バスター?

七皇は人間であった時、既にナンバーズをその身に宿していた、という描写は、

アリト、ギラグ、ミザエルとも共通のようです。

この、もともと宿していたナンバーズが、ドン・サウザンドに抜き取られ、後の各遺跡のナンバーズに。



国王は、富と権力は力で奪い取るものだと言い、侵略を繰り返していた様子。



王は厳つい体格、髭面、隻眼と、いかにもな風貌。

母親である王妃は、対称的に儚げな美人です。



ある日、王が病に倒れる。

母である王妃は、皇子に告げる。

今、この国を救う事が出来るのは、あなたしかいない。

王に代わり、国を導くベクター



争いを好まないベクター皇子は、平和と国民の幸せを願い、

敵国と和議を結び、人々の支持を集めるが。

それに激怒する国王。



これ以上、民が戦で死んでいくのを見てはいられません、と言うベクターは、

本当に優しい皇子の様です。

あのベクターにも、こんな時期があったのか・・・・。

このままのベクターであったなら、確かにその魂はアストラル世界へ行く資格があるかもしれません。



なぜこのワシから、平和の象徴などという、くだらぬ子が生まれたのだ!と言う国王。

貴様は我が栄光を地に落とす為に生まれた呪いの子に違いないわ!とまで言われてしまう。



父親に存在を否定される皇子。

父親をみつめるベクターの表情は、分かり合えない悲しみと、諦めの心境を感じさせます。



激昂した国王は、ベクターの剣を奪い、ベクターに斬りかかる。

その時、王妃が身を挺してベクターを庇い、国王の手で切りつけられ、命を落としてしまう。

同時に、発作を起こした国王もその場に倒れ・・・。



そこに、例の大鎌を持った黒フードの男がベクターの前に現れる。

 「お前は悲劇の皇子ではなく、狂気の皇子となるのだ。」

男はドン・サウザンドへと姿を変える。

 「お前には、この王と同じ残虐なる血が流れている。

  それを呼び覚まし、我が野望の力となるのだ。」

オーバーハンドレットがベクターの中に埋め込まれ。



冷たい表情へと変わった皇子が呟く。

 「俺は父と母を殺した残虐な皇子。

  この世界を血の海にする為に、生まれてきた。」



これだけを見ると・・・。

ベクターが両親を殺したのではなく、二人の死はやむを得ない事件だった。

その記憶をその場で書き換え、皇子自身が殺したと思わせたのが、ドン・サウザンド。



ドン・サウザンドが「残虐なる血を呼び覚ませ」と言っている事を考えると、

生前のベクター皇子は、確かに平和を愛する優しい皇子ではあったが、

同時に残虐さも持っていた、という事かな?

それを、両親を自らの手にかけたという誤った記憶と、オーバーハンドレットの力で、

狂気へと導いた?



元々は本当に純粋でいい奴だった、という訳ではなさそうです。

ベクターは、実は最初から残虐さや狂気を内に秘めていた。

それを見通していたドン・サウザンドが、内なる狂気を解放する切っ掛けを与えただけで。

ベクターの行ってきた悪事そのものは、本人の意志であり、それがベクターの本性であった。

今のベクターのゲスさを考えると、そう解釈した方が納得がいきます。



ベクターの真の記憶を目の当たりにする遊馬、小鳥、アストラルとナッシュ。

自分が両親をその手にかけた記憶が、嘘だったと知り、激しく動揺するベクター

ドン・サウザンドを呼び出し、怒りをあらわにする。



お前がベクターの心を壊したと、ドン・サウザンドを非難する遊馬。

遊馬はベクターに語りかける。



 ベクター、お前は元々、心の優しい奴だったんだよ。

 俺の前に現れた、真月零。

 あれが、お前の姿なんだ!

 あれが、本当のお前なんだ!



遊馬は、性善説派、なのかな。

あれだけ酷い事をしてきて、自身も酷い目にあって、そのせいで多くの仲間を失って。

それでもなお、ベクターに同情を示しています。



遊馬は優し過ぎる。

徹底して誰かを心底恨み憎むという事が、遊馬にはありません。

アストラルを消したIIIも、父親を異世界へ突き落としたフェイカーも、遊馬は最終的には許してしまう。

怒ることはあるし、許せないと思う事もあるけど、それは一時的で、デュエル後は相手と和解し、それ以降はわだかまりがない。

もしかしたら、遊馬は人を憎まない、のではなく、憎む事が出来ない、のかもしれません。

その感性は常人離れしているように思えます。



一方のナッシュは、遊馬とは対照的に、表情を変えず、静かにベクターを見守る。

遊馬のように、そう簡単にベクターに同情などしない。

最愛の妹を殺されていますから、これは当然です。



二人を比べると、ナッシュの方がより人間的であり、遊馬がある意味異常とも思える。

妹を殺されたナッシュの前で、遊馬がベクターを弁護するのは、ナッシュに対して酷く残酷な事かもしれません。



真月が本当のお前なんだ!という遊馬の考え方も、ベクターの一面だけで判断している様な気がします。

真月の行動は、よく見ると、遊馬に喜ばれ、気に入られ、信頼されるよう、よく計算されています。

それを、本当のお前だ、と言ってしまうのは、短絡的に思えますが・・・。

遊馬自身が、そうあって欲しい、と感じていたのかもしれません。



ドン・サウザンドは語る。



 ベクターは正に理想的だったのだ。

 純粋であればあるほど、その反動で生まれる闇は深い。

 強きバリアンとして生まれ変わる為にな。



記憶の改ざんを責める遊馬にドン・サウザンドは答える。

だが、この男の残虐非道な行いは事実。それは消せぬ。

己の行いを悔やむベクターに、遊馬は、そんなのやり直せばいい!と言う。

小鳥も遊馬の言葉に同意してます。



これも、軽々しく言ってはいけない事のような気がするな・・・。

かつての国の兵士達を、仲間を、妹を殺され奪われたナッシュの前では。

これでベクターが改心したとしても、失われた者達がかえってくる事はない。

それでも遊馬は、ベクターを恨むな、とナッシュに言えるのか?



遊馬と小鳥の言葉に、ベクターは言う。

だけど、俺に未来なんてあっちゃいけない。

ベクターはトラップを発動させ、自分フィールドの二体のモンスター全てのコントロールを、ナッシュに与える。

これが俺の償いだと言い、ナッシュに止めをさすよう促す。

ベクターはドン・サウザンドと共に消滅する覚悟なのだ。



反抗するドン・サウザンドを力で押さえ込み、止めをさせと言うベクターに、

ナッシュは静かに頷き、ラグナ・インフィニティでベクターにダイレクトアタックを仕掛ける。



ベクターへの止めに、メラグのナンバーズであるラグナ・インフィニティを選ぶ辺り、

やはりメラグの仇をとりたいという思いが、ナッシュの中では強いのだと感じました。

(攻撃力ならノーブル・デーモンの方が上?なのに。)



その瞬間。ベクターの表情が豹変する。

ベクターはトラップを発動し、ナッシュの場のモンスター全てを破壊。

笑い出すベクター



 みんな引っかかったんだよ。

 俺様の名演技によ!!



ナッシュにとどめを刺す前に、邪魔な神を始末すると言い出すベクター



 俺は、とっくに気がついていたのさ。

 お前が、俺の過去を改ざんした事なんて。



一時的にとは言え、ベクターを擁護してしまった小鳥も、この裏切りに愕然としてます。

遊馬ほどメンタルが強い訳では無い小鳥ちゃんの、精神的ダメージが心配です。

繰り返しベクターに騙されてしまった小鳥ちゃんが、人間不信になったりしなきゃいいけど・・・。



ベクターはドン・サウザンドの記憶改ざんに気付いていた、と言っているけど、

いつ、どの時点から気付いていたのか?

このデュエルが始まる前から??

ベクターの遺跡回では、明確に前世を思い出した様子はありませんでしたが。

記憶改ざんに気付いていたとして、どの程度、どんな内容に改ざんされていたのかまで、詳細に知っていたのか?



詳細に知っていたのなら、アンブラルが破壊され、真実の記憶が蘇り、激しく動揺したのも全部演技?

それとも。

ただ記憶改ざんの事実だけ知っていて、詳細までは知らなかった、とすると、

自分の記憶がどう改ざんされていたとしても、真実の記憶がどんなものであったとしても、

絶対に後悔も懺悔もしない自信が、ベクターには最初からあったのかな。



遺跡のナンバーズでオーバーハンドレットを倒される事で、真実の記憶が蘇る事も、実は事前に知っていて。

真実の記憶を見せられても、自分が揺るがない自信があって。

だから、ナッシュに自軍モンスターを与え、ダイレクトアタックを促すトラップを伏せていた?

と、考えると、恐ろしい程の策士です。



両親を殺したのが自分じゃなかった、としても、

自分がしてきた非道な行いを悔いることは全く無い。

これは本当にゲスなベクターらしい。



サルガッソ戦で遊馬に正体を明かした時のゲスさとも、

前世での石版デュエルで見せたゲスさとも、

キャラがブレる事がない。

それでこそベクターだ、とも思えました。(笑)



 ベクター「ただな、俺の記憶をいじってたテメエには、ムカついてんだよ!」



そんなゲスなベクターでも、記憶を改ざんされた事は、やはり許せなかった様子。

両親をその手にかけたという罪悪感に、それなりに苦しんでいたのかな・・・。

たとえ両親の死が避けられなかったとしても、優しい皇子のままでいたかった、

という願望が、もしかしたら少しはあったのかもしれません。



再び魔人の姿になるベクター

七皇の力を手に入れた今のベクターは、ドン・サウザンドの力を上回り、

遂にドン・サウザンドを消し去ってしまう。



ベクターはトラップのもう一つの効果で、ナッシュにとどめをさそうとするが。

ナッシュは墓地のモンスター効果を使い、受けるはずの効果ダメージを無効にして、これを特殊召喚



 ベクター「テメエ・・・!俺を信じたんじゃなかったのか!?」



 ナッシュ「信じる?そんな感情は、人間であった時の記憶と共に捨てたさ。」



終始、ベクターを厳しい表情のまま静かに見守っていたシャークは、最初からベクターの演技に気付いていたのか?

どんな過去があったとして、ベクターに同情するつもりはなかった、だけじゃなくて、

これまでのベクターの行いを全て知っているナッシュだからこそ、

ベクターの懺悔が嘘である事も見抜いていたんだろうな。



思えば、遺跡編の頃、俺はバリアンを信じないと言っていたシャーク。

相手を安易に信用しないその性格は、今も変わっていません。



ナッシュ一人だけは、ベクターに同情せず騙されず。毅然とした態度を保ち続ける。

遊馬の様に簡単に情にほだされない、璃緒やドルベを殺された怒りを忘れないで居てくれたのが、少し嬉しいです。



ベクターは、新たなRUMを使い、CNo.5 亡朧龍(もうろうりゅう)カオス・キマイラ・ドラゴン を召喚する。

その効果でナッシュのデッキのカードを一枚ずつ除外し、攻撃を仕掛ける。

ナッシュは、二度のカオス・キマイラ・ドラゴンの攻撃をモンスター効果で防ぎ、

三度目の攻撃をトラップでかわして、モンスターを特殊召喚

このターンを凌ぎきる。



とどめを刺せなかったベクターは、除外された三枚のカードをナッシュのデッキの一番上に戻しす。

一度カオス・キマイラ・ドラゴンの効果で除外されたカードは、このデュエル中、使用する事が出来ない。

これでは、ナッシュは三回ドローを封じられたも同然。

さらに、ベクターはカオス・キマイラ・ドラゴンのCORUを復活させる。



追い込まれたかに見えたナッシュだが。手札のマジックで、

デッキのカード四枚を墓地に送り、ドロー封じを解除して、新たにカードをドロー。

No.73 激瀧神 アビス・スプラッシュの召喚に繋げる。



ナッシュが、アビス・スプラッシュで、カオス・キマイラ・ドラゴンへ攻撃を仕掛けるが、

ベクターはトラップで、カオス・キマイラ・ドラゴンの攻撃力をさらに上げてしまう。

その時、ナッシュが速攻魔法のRUM(ランクアップマジック)を発動。

CNo.73 激瀧瀑神(げきろうばくしん)アビス・スープラが現れる。



カオス・キマイラ・ドラゴンの攻撃力が加わったアビス・スープラが、

カオス・キマイラ・ドラゴンを破壊。

ベクターは遂に敗北する。



アビス・スープラの召喚時、一瞬だけナッシュの姿がシャークに戻る描写が。

アビスは本来、シャーク自身のナンバーズ。

海底遺跡のナンバーズでもあり、ポセイドン王国の守護神でもあり。

バリアンとして死んだ後、人間として転生するよう導いたのもアビスでした。



アビスがここで登場したなら、ナッシュのオーバーハンドレット、ダーク・ナイトをアビスで倒し、

ナッシュの真実の記憶が蘇る展開はあり得るのかな?

ベクターの様子から、自分の記憶もドン・サウザンドに改ざんされている可能性と、

その記憶を取り戻す方法に、ナッシュは気付いているかもしれません。



ベクター同様、自分の記憶も改ざんされていると知ったナッシュは、どう思っただろう?

本当の記憶を知りたいと思うのか?

もしも改ざんされているとしたら、ナッシュの本当の記憶とは、一体どんなものなのか?



メラグとドルベは、真の記憶を取り戻す前に殺されてしまいましたが。

二人の本当の記憶とは、どんなものだったのかも気になります。

ドルベの記憶は、アリト、ギラグ、ミザエルと同様に、死ぬ間際に現れたドン・サウザンドによって、

オーバーハンドレットを埋め込まれ、その時の記憶だけ封じられた、と考えられますが。

メラグの過去は、どうだったんだろう?



デュエルに敗北したベクターは、どうなるのか?

これまでの例で考えると、ベクターがドン・サウザンドの力を失ったのなら、デュエルの敗北で死んでしまう?

逆に、ドン・サウザンドの力を持ち続けているとしたら、ミザエル同様、死ぬ事はなさそうですが。

ゲスなベクターですから、そう簡単にその力を手放すとも思えません。



惨めな敗北をして、これからどうするのか?

ドン・サウザンドをまた復活させて、反撃にでるのか?

それとも逃げ出すのか?



この後、ナッシュはベクターをどうするんだろう?

ベクターへの復讐は、これで果たした事になるのか?

ベクターがドン・サウザンドの力を無くしたのなら、もはや悪事を働く事は出来なくなると思いますが。

ベクターの反撃がこのまま無いなら、そのまま見逃すのか。

それとも、ベクターの命まで奪い取るのか。



ナッシュの、バリアン世界を救う使命はまだ残っているから、このまま遊馬と決着をつけるのか?

それとも、ドン・サウザンドが居なくなり、世界の危機が回避されたのなら、これ以上戦う必要はない?

あるいは、ドン・サウザンドがバリアン世界を救うなら、ナッシュはドン・サウザンドに味方する事もあり得るのか?



ドン・サウザンドも、これで終わりとは思えません。

復活するとしたら、どういう形で復活するのか?



ミザエルは、いつ駆けつけるのか?

この状況を見て、何を思い、何をするのか?

ヌメロン・ドラゴンを、どう使うのか?

カイトの死と引き替えに、人を信じる事をミザエルが知ったのなら、この後の行動がどう変化するのかも気になります。



今回明かされたベクターの過去に、ギリシャ神話のミノタウロスの伝説との関連を指摘してらっしゃる方がいました。

父に憎まれる呪いの息子、迷宮、という部分が共通しているようです。





今回もブレる事なく、終始ゲスだったベクター

ベクターがゲスな回で、担当脚本家さんが誰だったのかを後から確認すると、ああなるほど、と納得する人も多いようです。

サルガッソでベクターが正体を明かし、見事な煽りを披露した、あの衝撃の96話と同じ脚本家さん、なんですね。(笑)

ベクターが活躍する回の担当、なのでしょうか?



ベクターの、みんな引っかかったんだよ!の所の、全員を馬鹿にするベクターの表情、手振りも面白い。

ドローや効果発動時のアクションが大胆。



作監:Noh Gil-bo・Kim Hye-jeong)

(脚本:広田光毅