遊戯王ZEXAL II  第136話

第136話「凶気の記憶!ナッシュVS魔神(まじん)ベクター!!」





亡者に追われ、必死に逃げるベクター皇子。



 「俺じゃない・・俺じゃない!」



このシーンは一体・・・?

場所は、あの悲鳴の迷宮?

これが過去の記憶だとしたら、時期的にはいつの事なのか?

ポセイドン王国への侵略が失敗した後?

それとも、悲鳴の迷宮の伝説通り、国民を虐殺して、最後に自害する直前の頃なのか?



ベクターの名を呼んでいる所から、亡者達はベクターを恨んでいるように見えます。

あの亡者は、ベクターに処刑された者達?



追われるベクターの、あの怯えた表情。

こういう所を見ると、ベクターは恐怖をも克服した超然とした悪役、ではないと感じます。

怯えたり恐れたりする、俗物的ではありますが、まだ人間らしい感情を持っている。



「俺じゃない」と言っているのは、どういう意味なのか?

亡者に責められた、その罪は、自分のものではないと?言い訳をしているのか?

それとも、本当に無実だったのか?



どうやらベクターは悪夢にうなされていた様子。

バリアンでも夢は見るのか。



ナッシュを待ち受けるベクターは、メラグ達の力を取り込み、その力を増して、

ベクターに指図するドン・サウザンドを押さえ込む程になっていた。



「ナッシュとは俺が決着をつける。」

ベクターはナッシュとの勝負を、ドン・サウザンドに邪魔されたくないらしい。

思えば前世では一度敗北し、現世でも遊馬達と共にベクターの計画を邪魔した相手ですから、

ベクターがナッシュとの決着に拘る理由も分かる気がします。



ベクターの元に現れたナッシュ。

メラグ、ドルベに続き、アリト、ギラグまでもベクターに食われたと知らされ、

ナッシュの怒りは頂点に。



二人がバリアン態へと変身し、デュエルが始まる。



ベクターの背中から、膨らんだ皮膚が裂け、中から羽が現れるなど。

意外な変身シーンが面白い。



余談ですが、この辺りのシーン。

ナッシュがビームを発する所から、ベクターのドローまでは、

作監の蛯名さんが原画をされたそうです。

(ナッシュのビームをジャンプで華麗にかわすベクター

ナッシュとベクターのDパッドの展開も蛯名さん。)



先攻のベクターが永続魔法、ドン・サウザンドの契約を発動。

ナッシュのLPを2000支払い、お互いドローカードを開示。

マジックを引けばそのターン、通常召喚は出来なくなる。



ナッシュはバリアンズ・カオス・ドローで、RUM-七皇の剣(ランクアップマジック ザ・セブンス・ワン)を引き、

No.101 S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アーク・ナイト)から、

CNo.101 S・H・Dark Knight(サイレント・オナーズ・ダーク・ナイト)を特殊召喚



ダーク・ナイトの効果で、ベクターの場のモンスターをCORU(カオスオーバーレイユニット)に変え、

壁を失ったベクターに、 ダーク・ナイトのダイレクトアタックが炸裂する。

ベクターは大ダメージを受けたはずだが・・・。



ベクターはIVとナッシュのデュエルを見て、ダーク・ナイトの効果も知っていたと明かす。

ナッシュの攻撃も全て想定した上で、罠を仕掛けていた。

ベクターはトラップを発動させ、エクストラデッキからランダムに選ばれ、特殊召喚されたのは、

CNo.65 裁断魔王ジャッジ・デビル。



ベクターのターン、引いたマジックを発動させ、永続魔法、ドン・サウザンドの契約を墓地に送り、

エクストラデッキからカオスオーバーハンドレットを三体を、効果を無効にして特殊召喚する。



ベクターの場に、

CNo.104 仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)アンブラル、

CNo.102 光堕天使(アンホーリー・ライトニング)ノーブル・デーモン、

CNo.103 神葬零嬢ラグナ・インフィニティ、が現れ、

ベクターと、ベクターが奪ったドルベとメラグ、三人のカオスオーバーハンドレットが場に揃う。



 以上、元はドルベとメラグの、

 今は お・れ・の!カオスナンバーズ!



メラグのラグナ・インフィニティが現れた時が、一番辛そうな表情を見せるナッシュ・・・。

ナッシュに妹のエースモンスターを見せつける事で、その苦しむ姿をベクターが楽しもうとしているのは、明かです。



 どうだ、ナッシュ?

 大切な仲間のナンバーズが敵のフィールドにいる心境はよ?



 寂しいか?

 切ないか?



 メラグもドルベもいねえ。

 ギラグも、アリトも、みんな、みんな、み〜んな!

 俺のもんだ!

 オメエは一人だ!一人ぼっちなんだよ!



ベクターは、仲間のナンバーズを使ってナッシュの孤独を煽ろうとしてますが。

・・・ベクター自身は、孤独を感じた事はないのかな・・・。

前世から、誰にも心を開かなかったベクターも、一人ぼっち、なのでは・・・?

「オメエは一人だ!一人ぼっちなんだよ!」という台詞は、そのままベクター自身にも突き刺さる事実のように思えます。



この一人ぼっちだと言うベクターの言葉を、ナッシュは否定しませんでした。

いや、一人じゃない。仲間の魂は今も自分の胸の中にある、なんて都合のいい事は、今のナッシュには言えない。

自分のせいで仲間が犠牲になって死んだ、という思いがあるのかもしれません。



そこに駆けつけた遊馬。

遊馬を、今は敵だ!と言うナッシュと、

ナッシュを倒した後に遊馬も相手してやると言うベクター



メラグ、ドルベ、ギラグ、アリトの力を吸収し、ベクターが姿を変える。

そして、この場所がベクターとナッシュにとって、因縁の場所だと明かす。



ベクターが語る、前世の出来事。

遺跡でのナッシュとのデュエルに敗北した後、

ベクターは命からがら自分の国に戻った。

その後もナッシュは再びベクターを追って、ベクターの国の、この遺跡にまで乗り込んできた。



だが、ナッシュがこの場所に乗り込んできた時、

既にベクターは全ての家臣や民を処刑し、たった一人で立っていた。



ベクターは処刑の理由を語る。



 邪魔だったんだよ、どいうもこいつも。

 もう戦はやめろとか、腰抜けな事言いやがる奴ばっかでよ。

 邪魔で邪魔で仕方なかった。

 だから始末したんだよ。



呪われし王宮の伝説は、やはりベクターのものだった。



ナッシュにゲズの極みだと言われて、この程度でゲスとは甘いと、

衝撃の事実を語り出す。

ベクターが最初に手をかけたのは、実の自分の両親だと言うのだ。



 そうさ、俺は邪魔な奴を排除してきた。

 無敵だったんだよ。

 あの日、テメエに負けるまではな。



 ナッシュ!俺はオメエに再び負けた。

 しかも、自分の王宮でな!

 惨めだったぜ!悔しかったぜ!

 だからよ、同じ場所で今度こそ俺が、テメエをぶっ潰す!



描写が飛び飛びなので、ちょっとこれまでのベクターの過去を簡単にまとめると・・・。



ベクターがナッシュ達のポセイドン王国を侵略。

妹、メラグの犠牲で、ベクター軍を撃退する。

(108・109話)

 ↓

メラグの仇討ちの為、ナッシュは軍を率いてベクターを追う。

追い込まれたベクターは、ナッシュと一対一のの石版デュエルに持ち込むが、ベクター敗北。

激しい戦いは、多くの犠牲を生み。その魂はバリアン世界へ。

(119話・120話)

 ↓

生き延びたベクターは自国に戻り、戦に反対する家臣や国民を処刑。

そこにベクターを追ってナッシュが王宮に乗り込んでくる。

ベクターは再びナッシュに敗北。自害する。

(今回の136話)



ナッシュとベクターは、海底遺跡だけでなく、ベクターの王宮でも対決していた、という新事実。

この王宮での、二度目のベクターとナッシュの対決に関しては、詳しい描写はありませんでした。

やはり石版デュエルだったのかな?

だとすると、ナッシュとベクターのデュエルでの勝負は、前世と今世を合わせれば、これで三度目。

まさに因縁の対決、となります。

二度目の二人のデュエルも、できれば見たかったな。



悲鳴の迷宮の、呪われし王宮の伝説では、

「全ての人々の命を奪いし後、王子一人残りて、自らの命を絶つ」とありました。

これに関しても詳しい説明はありませんでしたが、

想像するに、ナッシュとの二度の敗北後、またもベクターは一人生き残るが、

とうとう自身の国をも失ったベクターが、追い込まれ絶望し、一人で自害した、という事かな。



それにしても、最初にベクターが手にかけたのは、自分の両親だった、とは・・・。

一体、どんな経緯で殺したのか?

やむにやまれぬ事情があったのか。

それとも、ベクターの身勝手な理由によるものだったのか?



ベクターの場の、四体のナンバーズによる攻撃が始まる。

まずはアンブラルで、ダーク・ナイトを破壊。

ナッシュはその効果でダーク・ナイトを蘇らせ、LPを回復。

続くノーブル・デーモンの攻撃で、破壊されたダーク・ナイトはCORUが無いため、もはや復活できない。

ラグナ・インフィニティとジャッジ・デビルのダイレクトアタックを受けたナッシュのLPは残り僅か。



ナッシュは大ダメージを受けながらも立ち上がり、デュエルを続ける。

マジックを使い、ベクターの場の最も守備力の高いモンスター一体のコントロールを得る。

ナッシュがこのマジックを使う事を見通していたベクターはトラップを使い、

全てのモンスターの守備力を0に。さらに、ナッシュに効果ダメージが及ぼうとしたが、

トラップでこれをかわすナッシュ。

ナッシュもまた、自分の戦術がベクターに読まれている事を想定して対策していたのだ。



守備力0となった四体のナンバーズの中から、ナッシュに差し出すモンスターをベクターに選ばせる。

ベクターが渋々選んだのは、攻撃力が最も低い、ジャッジ・デビル。



ナッシュは、トラップの効果で、コントロールを得たジャッジ・デビルの攻撃力をアップし、

アンブラルを破壊する。

ダメージを受けたベクターが、人間の姿に。

遺跡のナンバーズによって、オーバーハンドレットナンバーズが破壊された時、その遺跡の主の真の記憶が蘇る。

今、ベクターの真の記憶が、蘇ろうとしていた・・・。



ドン・サウザンドの呪縛と記憶の改ざんの件を、ベクターやナッシュは知らず。

その呪いを解く方法も知らなかったはずですが。

図らずも、ベクターの遺跡のナンバーズ、ジャッジ・デビルが、

ベクターのオーバーハンドレット、アンブラルを破壊する展開になった、というのが面白い。



果たして、ベクターの真の記憶とは・・・・?

これまでに語られたベクターの前世は、全てゲスな性格ですが、

「幼き頃より人心を信じず」と伝説にある通り、ずっとゲスなままだったのか?

そんなベクターが、アストラル世界に行ける程の高尚な魂を持っていたのか?

真実の記憶の中で、ベクターに対して同情に値するような事情はあるのかどうか?

これまでの悪行をも覆い尽くす程、同情出来るものなのか?

いろいろ気になります。



本当の記憶を取り戻した所で、あのベクターがそう簡単に、反省し、改心する・・・とも思えませんが。

記憶に関係なく、このままデュエルを続けるのか?

それとも、ドン・サウザンドを裏切るのか?



ベクターに、いかなる悲惨な過去があったとしても、前世での罪、今世バリアンでの罪が許される訳ではありませんが。

最後はEDに登場出来ない程度には悲惨な結末を迎えるにしても、

なぜ自分は人を信じられなかったのか?あれほどゲスになってしまったのか?

改心や反省はなくてもいいから、その理由を最後に自覚する事ができたらいいな・・・。

それなら、多少は救いがあるような気がします。



陰影の細かさ、肌のつや、キャラの表情の豊かさ、顔芸ぶり、筋肉っぽさ。

くるくると変わる煽りのベクターの表情がとにかく豊かで、見ていて飽きない。

体操競技のようなベクターの華麗なジャンプと着地。(笑)

駆けつけた遊馬に、後でたっぷり相手してやるからよ!の時のウインクする仕草とか。

バリアン態になった後も、目とリアクションで演技するベクターが、とにかく楽しい。



毎度ながら、ベクターの巧みな煽りの台詞、ベクター役の日野さんの、相手をバカにしたような巫山戯た演技、

それに作画も相まって、ベクターの活躍する回は面白い。



作監:蛯名秀和)

(脚本:広田光毅